皆さんが大好きなアロカシアですが、前回の記事で品種を調べていたところ、アロカシアには幾つかの系統がある事がわかりました。
似た種類で「コロカシア」という近縁種があるという事も前から気になっていたので、今回はアロカシアについて調べてみました。
知らないよりも知っていたほうが断然面白くなると思います。
アロカシアの知識について、皆様のお役立ちとなれたら幸いです。
アロカシア属とコロカシア属の違いについて
呼び方・形態ともに似ている「コロカシア」の違いについて調べてみました。
※以下の特徴はその限りではない場合も含みます。
アロカシア属(Alocasia)とコロカシア属(Colocasia)の学術的な違いとしては下記のとおりです。
(長い文章が苦手な方は比較表へジャンプしてください。)
分布域
アロカシア属は主に東南アジアからオーストラリアにかけて分布し、野生種は約70種以上の確認が認められており、コロカシア属は熱帯および亜熱帯アジアに広く分布し、野生種では約20種以上の確認が認められている。
胚珠
アロカシア属の雌花は子房の底部につき、胚珠が少数であり、コロカシア属の雌花では胚珠が子房の壁につき多数ある。
不稔花
アロカシア属の花は花序の雌花のある部分に不稔性の花は混在しないが、コロカシア属の花は不稔性の花が混在する。
果実
アロカシア属の実は色彩に富んでいるものが多く、鳥による種子散布に適応しやすい形態をしているが、コロカシアの果実は地味な色合いをしている事が多く、粘着を帯びた種子をつけるものが多い。
葉の形状
アロカシア属は細く矢じり型になるものから幅広の形状をしたものとバリエーションに富んだものが多いが、コロカシア属はおおむね丸みを帯びた形状のものが多い。
葉の大きさ
アロカシア属の葉は比較的コンパクトに育つ傾向であり、コロカシア属は比較的大きくなる傾向が強い。
葉の質感
アロカシア属の葉の表面は光沢があり、厚みのある為、比較的硬いものが多く、アロカシア属の葉の表面は光沢はあまり感じられず、葉の厚みが薄い傾向ががあり、柔らかいものが多い。
葉先の向き
アロカシア属は葉先が上向きになるものが多く、コロカシア属は葉先が下向きになるものが多い。
葉柄の位置
アロカシア属は葉柄が葉の基部よりも前方に付くのに対して、コロカシア属は葉柄が葉の基部の中央につく。
根の性質
アロカシア属は塊茎と根茎を作るが、コロカシア属を根茎は作らない。
塊茎の形状
アロカシア属は塊茎が棒状に伸びるものが多いのに対し、コロカシア属は丸い形状になるものが多い。
塊茎の毒性
アロカシア属は塊茎に毒性があるものを含むが、コロカシア属の塊茎は食用として利用されている。
株の高さ
アロカシア属の株の高さは比較的小型であり、コロカシア属の株の高さは比較的やや大きい。
明るさの傾向
アロカシア属では明るい環境を好むが、直射日光を好まない種も存在する。
コロカシア属ではアロカシア属よりも更に明るい環境を好み直射日光にも耐えるものが多い。
水への耐性
アロカシア属では湿った土壌または水が溜まった土壌に耐える事は苦手だが、コロカシア属は耐えることができる。
比較表
分かりやすいように違いを表にまとめてみました。
アロカシア属 | コロカシア属 | |
---|---|---|
花(胚珠の数) | 比較的少量 | 比較的多数 |
不稔花 | 少ない | 多い |
葉の形状 | 縦に細いか丸い | おおむね丸い |
葉の大きさ | 比較的小型 | 比較的大型 |
葉の光沢 | 光沢があるものが多い | 光沢がないものが多い |
葉の厚さ | 厚く、硬い傾向 | 薄く、柔らかい傾向 |
葉先の向き ※不一致が多い | 上を向く? | 下を向く? |
葉柄の付き方 | 比較的葉の基部より前方? | 比較的葉の基部より中央? |
根茎の有無 | 根茎をつくる | 根茎をつくらない |
塊茎の形状 | 長いものが多い | 丸いものが多い |
塊茎の毒性 | 毒性があり危険な種を含む | 食用のものがある |
株の高さ | 比較的コンパクト | 比較的大きくなる |
光の耐性 | 直射日光に耐えられない種もある | 直射日光にも耐える |
湿地耐性 | 水を多く含んだ土壌に耐えられない | 水を多く含んだ土壌にも耐える |
正直なところ、葉先の向きについては様々な品種で比較してみたものの、その特徴が属をまたがって混在することが多いため、あまり当てにならないように感じました。
葉柄の位置については何度読み返しても理解ができず、勝手な解釈として葉を横から見たとき、葉にくっついている部分が葉のふちよりも飛び出ているかどうかという事としました。
アロカシアでは葉の中央が高い位置にあり(品種によっては縁にかけて反り返るような形状)となり、コロカシアでは葉の中心が低く、水が溜まるようなお椀のような形状をしているといった解釈です。
間違っていたら教えてください(*_*;
花の構造についても開花させていることが条件であり、確認するのは簡単ではなさそうです。
コロカシアについては、アロカシアよりも更に明るさを好む種のようですので、コロカシアを上手に育てるには、直射日光の当たる窓際もしくは屋外で管理する方がうまく育てられるかもしれません。
実際に販売されている品種で確認してみてください。
呼び名について
アロカシアは様々な呼び名が存在しており、特に海外の記事などで下記のような名称をよく見かけます。
- エレファントイヤー
- ジャイアントタロ
- チャイニーズタロ
これらはアロカシアの総称としての別名を意味しているようで、特に観賞用アロカシアの英名として使われていることが多いようでした。
また他にも「アロイド」や「アロイディア」などの名称も見受けられましたが、詳しくは下記の分類にて記述します。
塊茎について
俗にいう園芸種の「クワズイモ」はイモを形成する種であるという事が分かりますが、園芸品種によっては地上部に露出しにくいものがあります。
ただ、地上部に露出していないだけで、地中には小さくとも塊茎を形成をするようです。
これはアロカシアとコロカシアの両種の特徴です。
クワズイモ以外の品種でも株が大きくなれば、中鉢のクワズイモ程度まで塊茎部が肥大した例もあるようですが、多くの場合大きく肥大する事は稀であり、日本では滅多に見かける事はありません。
また、アロカシアは基本的に耐寒性は弱いですが、品種ごとに耐寒性が異なっており、弱いながらも耐寒性がある品種は冬に地上部は枯れますが地中内で芋が残り、春になると地上部に芽吹いてくるようです。
ただし、冬に5℃を下回ると枯れてしまうため、お住まいの地域によっては越冬のできない地域も出てくる事になります。
毒性について
アロカシアには「シュウ酸カルシウム」という毒を有しており、特に茎や芋に多く含有しています。
仮に食してしまった場合、吐き気や下痢などの中毒症状が生じるという事ですので、お子さんがおられたり、ペットをお飼いのご家庭で管理する場合は注意が必要です。
品種改良により、毒性を持たない食用のアロカシアも存在しているようです。
アロカシアの分類と階級について
以前の記事で、その種を把握するには上位階級、下位階級などタクソンを把握すると種に対する知識に納得がいったので、今回も階級についても調べてみました。
階級についての記事はこちら
理解に苦しむ内容となっていますが、本当にアロカシアが好きなのであれば、一度目を通す事をおすすめいたします。
面倒な方は階層図へジャンプ
アロカシアに紐づく階級
階級は下記のとおりです。
目:オモダカ目(Alismatales)
科:サトイモ科(Aracea)
亜科:サトイモ亜科(Aroideae)
属:アロカシア属またはクワズイモ属(Alocasia)
分類でいうところのアロカシアは「アロカシア属」または「クワズイモ属」となっていました。
アロカシア属の上位階級(亜科)と並列階級(属)の一覧にしてみました。
※多少省いたものもあります
ギムノスタキス亜科(Gymnostachydoideae)
ミズバショウ亜科(Orontioideae)
ウキクサ亜科(Lemnoideae)
アンスリウム亜科(Pothoideae)
アンスリウム属(Anthurium)
ホウライショウ亜科(Monsteroideae)
エピプレムヌム属(ポトス類)
スパティフィラム属
モンステラ属(ホウライショウ属)
ラジア亜科(Lasioideae)
ザミオクルカス属(Zamioculcadoideae)
サトイモ亜科(Aroideae)
アロカシア属(Alocasia)
アロカシア属(Alocasia spp.)
インドクワズイモ属(A. macrorrhizos)
クワズイモ属(A. odora)
コロカシア属またはサトイモ属(Colocasia)
アグラオネマ属(Aglaonema)
ブセファランドラ属(Bucephalandra)
フィロデンドロン属(Philodendron)
ディフェンバキア属またはカスリソウ属(Dieffenbachia)
カラジューム属またはハイモ属(Caladium)
階層図
階層図を作成してみました。
一覧よりアロカシア属の他に、幾つか聞き覚えのある名称があると思います。
よく植物の説明で「〜の仲間」や「〜の親戚」のような言い回しをしますが、具体的にはこれらの分類の事を指しています。
サトイモ亜科(Aroideae)の中の属であれば、より近しい仲間となりますが、アンスリウム属やザミオクルカス属は他の科に属しているので、遠い仲間という事が分かりました。
一覧からアロイドと呼ばれるものはサトイモ科に紐づく下位階級(総称)の事を指しており、アロイディアと呼ばれるものサトイモ亜科に紐づくアロカシアの近縁種のみを指していました。
ちなみに私達の食用としてのサトイモはコロカシア属となります。
系統について
アロカシアの系統についてですが、基本的には下記の3パターンの系統がある事が分かりました。
- オドラ系統(クワズイモ系統)
- ククラータ系統またはククラタ系統(シマクワズイモ系統)
- マクロリッツァ系統もしくはマクロリゾス系統(インドクワズイモ系統)
オドラ系統(Alocasia odorata~)について
代表品種はクワズイモなどです。
和名では「クワズイモ系統」と呼ばれているように、一般的な観葉植物として流通している「クワズイモ」の事を指しているようです。
耐寒性は弱いですが、アロカシアの中でも5℃と比較的強く、関東地方より西側では露地栽培が可能とされています。
その際、冬は地上部が枯れて休眠しますが、春になると地中に残った根茎が再び芽ぶき出します。
原産地は中国南部、台湾、インドシナ、インドなどの熱帯・亜熱帯地域に分布し、日本では四国から沖縄にかけて自生しているようです。
ククラータ系統(Alocasia cucullata~)
代表品種はククラータなどです。
外観はクワズイモに非常に似ていますが、クワズイモよりもコンパクトに成長する小型な種として扱われているようでした。
和名では「シマクワズイモ系統」と呼ばれており、中国南部〜東南アジアにかけて分布しています。
日本では、琉球列島と小笠原諸島に自生しているようです。
マクロリッツァ系統(Alocasia macrorrhiza~)について
代表品種はマクロリッツァなどです。
和名では「インドクワズイモ系統」と呼ばれており、インドクワズイモで調べてみると、人間が傘にできるほど迫力のある大きな葉に成長する種のようですが、見た目は同じく似ており、クワズイモを巨大化させたような姿をしており、耐寒性も弱いようです。
分布は主にインドから東南アジアとなっており、日本では沖縄県や鹿児島県の奄美群島などにも自生しています。
系統を調べて感じたこと
アロカシアには基本三系統があることは分かりましたが、自分としては流通するアロカシアの全ては、この三系統のどれかに分類されるものと考えていましたが、私達の良く知る園芸品種が、どの系統に属しているのかという事を調べてもあまり情報が出てきませんでした。
これらの三系統を主に指している種として、地上部に根茎が明らかに目に見えるほど形成された野生種の情報がほとんどでした。
つまり、塊茎部が地上部に露出するほど肥大しない「グリーンベルベット」や「クプレア」などの園芸種は上記三系統とは別の括りとして扱われているのでは無いかと感じました。
種小名に「cucullata~」のつくものとして、ムーンランディングやレッドステム、「macrorrhiza~」では「ブラックステム」や「スティングレイ(スティングレー)」など品種を確認しましたが、これらが上記の系統に属するのかは不明のままです。
情報が無いため、これはあくまで私の考察となりますが、詳細が分かる方がおられましたら、コメントいただければ幸いです。
まとめ
- アロカシアは直射日光を好まない種が多く、コロカシアは直射日光のような強光を好む。
- アロカシアは屋内で育てやすく、コロカシアは屋外で育てやすい。
- アロカシアは土の湿り気の耐性に弱く、コロカシアは土の湿り気の耐性が強い。
- アロカシアとコロカシアは属の異なる近縁種。
- アロカシアとコロカシアは大なり小なり地中に塊茎を形成する。
- アロカシアは主に茎や根に毒を有する。
- アロカシアには基本三種類の系統が存在する。
- オドラ系統、ククラータ系統、マクロリッツァ系統がある。
- 園芸種でいう「クワズイモ」はアロカシア属の一種。
- ほとんどの園芸品種は、どの系統に属するか明らかではない。
- 「アロイド」とはアロカシアとアロカシアの近縁種も含めたサトイモ科の総称の事。
【訪問者のコメント欄】