アデニウムを複数育てて、コレクションにしている方も多いとても人気のある植物です。
本種を育てるには少しコツが必要です。
育てた経験がない方は手を出しづらく、育ててみたとしても失敗をしてしまったという方も少なくないように思います。
今回は本種について、誰でもうまく育てられるよう深い部分まで調べてみました。
基本情報
アデニウム属は現在12種類ほど存在すると言われています。
コーデックスとして扱われており、「砂漠のバラ(砂漠の薔薇)」とも呼ばれています。
キョウチクトウのような花を咲かせ、ハイブリットの元となった原種はアラビア半島とアフリカに自生していたものとされています。
アデニウムは有毒ですので、ペットをお飼いの方やお子さんをお持ちの方は十分お気をつけください。
参考:wikipedia.org
アデニウムの種類
幾つかの品種が流通していますが、特徴が似ているため品種の判別がしづらいです。
特に似ている2種について調べてみました。
アラビカム(Adenium arabicum)
樹高は最大で5mにも及びます。
イエメンやサウジアラビアなどのアラビア半島が原産で基本的に花色はピンクのみで、多少の違いがあっても濃くなる程度です。
イエメンのアデンを中心とした気候
夏:長く、暑くまたは蒸し暑く、ほぼ曇り
冬:長く、暖かく、蒸し、風が強く、ほぼ晴れ
1年を通して乾燥状態が続きます。
気温は24~35°Cの幅があり、23°C 未満また36°C を超えることは滅多にない。
気温
暑い季節
・5月~9月
・最も暑い季節は6月
・平均最高気温35℃
・最低気温30℃
涼しい季節
・11月~3月
・最も涼しい季節は12月
・平均最低気温24℃
・最高気温28℃
降水量
・雨季8月~9月
・最も多い月は9月で平均合計累積降雨量は16mm
・最も少ない季節は12月の平均合計累積降雨量は3mm
(比較対象として日本の東京では多い月192mm、少ない月43mmです。)
オベスム(Adenium obesum)
アフリカ乾燥地帯(モーリタニア、セネガル)から熱帯アフリカ(ウガンダ、ケニア、タンザニアソマリア)等の半乾燥地域が原産になります。
分布範囲がかなり広いです。
成長を早めるため、接ぎ木をしているものが多く目立ちます。
モータリアの気候
(乾燥地帯の中心として)
夏:短く、暑く蒸す
冬:短く、快適で風が強い
年間を通じて乾燥状態であり一部曇り
1年を通して15~35°Cの幅があり
12°C 未満または 41°C を超えることは滅多にない。
気温
暑い時期
・9~11月
・最も暑い季節は10月
・平均最高気温は35°C
・最低気温は24°C
涼しい時期
・12月~2月
・最も寒い季節は1月
・平均最低気温は 15°C
・最高気温は 28°C
降水量
・雨季は7月~10月
・最も多い季節は8月で平均合計累積降雨量は35mm
・最も少ない季節は5月で平均合計累積降雨量は0mm
ケニアの気候
(半乾燥地帯の中心として)
夏:短く、暖かく、本曇り
冬:短く、涼しく、乾燥状態、一部曇り
1年を通して12~27°Cの幅があり
10°C 未満または 29°C を超えることは滅多ない
気温
暖かい季節
・1月~3月
・最も暑い季節は2月
・平均最高気温は27°C
・最低気温は15°C
涼しい季節
・6月~8月
・最も寒い季節は7月
・平均最低気温は 12°C
・最高気温は 22°C
降水量
・雨季10月~6月(約8ヶ月)
・最も多い季節は4月で平均合計累積降雨量は87mm
・最も少ない季節は7月で平均合計累積降雨量は3mm
両種の違いについて
違いについて下記の通りまとめてみました。
(スマートフォンは横にすると見やすくなります)
確実な判断材料としてピンク以外の花が咲いていた場合はアラビカムでは無いです。
またオベスムはほとんどものもが接ぎ木になっています。
参考資料:Zenyr Garden
同種説について
一説によれば分布域が広域であることから、どちらかの大陸の固有種が帰化したものという考え方もあり、アラビカム=オベスムという見解もあるようです。
現在では観賞用として世界中で栽培されているため、スリランカや東南アジアの一部などで帰化したという事例があります。
また、今日様々なハイブリッド種が誕生しており、私達の手元にあるアデニウムは純粋な系統の種である可能性は低いと思われます。
参考資料:Pl@ntUse
育て方について
※育て方については個人的な考えを含みます
厳密に言えばアラビカムとオベスムでは分布域が異なり気候も異なるため、育て方も微妙に違いが出てくるかもしれません。
オベスムだけでみても乾燥地帯から半乾燥地帯までと複数の国をまたがって分布しています。
しかし、かなりの広域に分布している事と流通・生産の過程で様々な品種が入り混じっているので正確な系統が不明確です。
よって平均的な育て方を探る必要があると考えました。
日照
現生地では直射日光にさらされているところが多いので、直射日光の耐性はありますが、強い日射によりコーデックス部が日焼けを起こす事があります。
変色を考慮し、夏時期など季節は強い日差しを避けたほうが安全かもしれません。
逆に日照不足の場合は枝が徒長して株のバランスが悪くなり、開花量も減少します。
室内で育てる場合は東向きの直射が当たるような環境が必要です。
温度耐性
一年中、十分な気温がある場合は落葉をせず、常緑で成長するようです。
日本においては北海道など寒冷地であった場合、原生地の気候に合わせるのが大変かもしれません。
沖縄のような年中暖かな気候においては、容易に育てることが可能でしょう。
耐寒性
現地では平均的に10℃を下回る事はほとんどないようですので、寒さには弱いです。
日本の冬では多くの地域において屋内に取り込む必要があります。
耐暑性
一番暖かな地域では40℃近くまでの高温であり、1年を通して暖かな季節が続くため、耐暑性については強いと思われます。
水やり
水やりについてはタイミングとテクニックが必要になってきます。
自生地では1年を通して乾燥状態が続く為、アデニウムはそういった乾燥に耐えられるような能力を持っています。
上記記載の通りモータリアの気候をみてみると、乾燥した季節では降雨量が0mmとなっているように地域によっては非常に過酷な環境となっています。
干ばつが長く続いても本体に水分を多く貯水しているので、乾燥に耐えぬく能力があるのです。
逆に必要以上に水を与えてしまうと根腐れを起こしてしまいます。
基本的には乾かし気味に育てる事となりますが、現地においても雨季は存在しています。
当然雨季は降水量が増えますので、この雨季がアデニウムにとっての成長期にあたります。
よって、「年中乾燥させておけば良い」というのは間違いとなり、季節や気温に合わせて水やりの量を調整する必要があります。
日本の場合は降雨量が多く、外で雨ざらし状態が続くと、枯れてしまう事があるので注意してください。
余談になりますが、ある生産メーカーから聞いた話となりますが、休眠期に入ったアデニウムを土から掘り上げて、根が剥き出しの状態で3ヶ月放置しても枯れることはないと言っていました。
それだけ乾燥には強いということのようです。
成長期
気温が35℃~25℃くらいが成長期です。
日本においては初夏~夏が成長期となります。
最低気温が25℃になるような暖かな時期は水をしっかりと与えることにより成長します。
ただし、土が乾いたのを確認してから与えるようにしてください。
休眠期(落葉期)
気温の低くなる時期は水やりの調節が難しくなってきます。
夏以降では極端な断水により強制的に落葉期を誘発させることができます。
逆に水やりの調整によって落葉期を遅らせる事も可能です。
最低気温が10℃を下回るような季節から自然と落葉を始めます。
落葉を始めたら必ず断水をしてください。
(特に寒冷地であった場合は気をつけてください。)
「可愛そうだからたまには水を・・・」と与えてしまい、株が腐ってしまったといった話を良く耳にします。
これは本来10℃以下の低温が苦手ですので、水を与えてしまった事で寒さに耐えられなくなってしまったのではないかと推測します。
落葉のメカニズムについて
落葉する事はアデニウムにとって生死に関わるほど重要な事です。
葉を付けている事で常に蒸散してしまいます。
自生地の地域によっては雨季が短く、乾燥期が長く続きます。
乾燥期に葉を展開させていると蒸散してしまい、落葉させないと乾燥に耐えられなくなってしまう恐れがあるからです。
涼しい季節になると降雨量が極端に減りますので、気温にはとても敏感であると思われます。
落葉後は蒸散しないような態勢になりますので、過度な水やりにより根腐れが発生する事になります。
落葉は厳しい環境に耐える為の防衛反応であるという事です。
株の異常サインについて
【株に白いデキモノ】
株にポツポツと白いニキビが出来始めると根腐れのサインです。
コーデックス内部の膨圧がかかり、防衛反応で外に水を押し出そうとしている為と言われています。
【葉が黄色くなる】
葉が黄色いが軽く引っ張っても落葉しない場合は、根腐れなど根に問題が起きている可能性があります。
掘り起こして確認する必要があります。
土壌
サボテンが好むような多孔質で排水性の優れた土を使用してください。
鉢も出来るなら排水性の優れた素焼き鉢などが良いでしょう。
深さのある鉢で育てるとコーデックスが縦に成長しますので、形の良いアデニウムに育てるには浅い鉢の使用をおすすめします。
肥料
コーデックスを発達させて開花を増やすには窒素含有量が抑えてある「カリウム、リン、微量栄養素」が豊富な肥料を施肥してください。
剪定
年に1回、成長期に剪定を行う事も可能です。
バランスを整える場合は成長期に行いましょう。
成長日記
2021
8/4 成長記録開始
昨年の夏頃から有る冬越しをしたアデニウムです。
冬の間は全く水を与えず、たまに霧吹きをしていました。
初夏では水を与えていなかったので、株がかなりへこんでしまっていました。
7月に入り気温がかなり上がってきていたので、枯れてしまわないか不安はありましたが、バケツに薄く水を張り、一日だけ腰水をしてみたところ数日後には株のへこみは元に戻っていました。
30℃近く温度がある場合は水やりをしても問題はなさそうです。
8/11 葉の展開が急速に進む
葉が成長しています。
枯れてしまう恐れもあるので、その後は頻繁な水やりをしていません。
本来、この時期は水やりをしなければならない時期なのですが、最初は慎重にいきたいと思います。
置き場は午前中だけ直射日光のあたる室内の窓辺で管理していました。
室内で管理して分かったことは、風通しが悪いので「コナカイガラムシ」が発生する事です。
気温の暖かい時期は、屋外で管理した方が病気もなく育てられるかもしれません。
そういった観点からみれば、インテリアプランツとしては少々不向きです。
8/17 芽吹きの勢いが良くなる
葉も色濃く、イキイキとしているの分かります。
それまで動きが見られなかったのですが、水を与えた途端に葉の動きがあった事は明白です。
根に触れた水分が活動再開のスイッチのようです。
よって、気温のある時期はしっかり水やりをした方が良いということになります。
水をたくさん与えて良いのは、30度以上あるような温度が高い時期に限るということでしたので、そこは注意が必要です。
8/25 まさかの発覚
想定外の事態が発覚しました。
しっかりと確認をしていなかったのが悪いのですが、「アラビカム」や「オベスム」だと思っていたアデニウムは「ソコトラナム」の表記となっていました。
同じアデニウムではありますが、ソコトラナム地方の気候は調べていなかったので少々趣旨とは異ってしまいました。
という事で、持っていた別のアデニウムであるオベスム表記のあるものを検証個体として追加します。
基部を確認すると、やはりオベスムは接ぎ木のようです。
他にもソマレンセという品種もあったので、同時に経過観察をしていきたいと思います。
私が知らないだけで、いろいろな品種の流通があるようです。
9/8 再びハダニが出始める
ハダニにやられたのは「ソコトラナム」です。
せっかく調子が出てきたところを、邪魔してくるのが害虫というものです。
仕方ないので、ハダニに効く薬品で殺虫しました。
9/9 別種の葉の展開
こちらは「オベスム」です。
古い葉は切り落としたので、新しく葉が展開してきております。
9月に入っておりますが、水を与えてやるとご覧の通り成長を開始させました。
こちらは「ソマレンセ」です。
3種とも水やりを行ったところ同じ状況になりました。
9/16 順調に成長
申し分のない成長ぶりです。
一方、ソコトナラムというと未だにハダニの影響が尾を引いています。
9/30 新たな害虫の発生
順調に成長していた2種について安心したのも束の間、新たな刺客が到来しました。
コナカイガラムシです。
葉の葉の基部に寄生しているので非常に取り除きにくそうです。
一方、ソコトラナムはというと、残念な姿へ変貌を遂げていました。
別種が順調に成長をしていることから、気温ではなくハダニの影響による落葉と思われます。
ハダニが発生すると落葉してしまうという事が分かりました。
11/1 害虫発生が続く
オベスムは調子が良かったのですが、ここに来てハダニ・コナカイガラムシの被害が出てきています。
やはり害虫の発生後は良い状態を維持できないように思います。
ソマレンセも同様に害虫の被害に遭っています。
厳しい状況であったソコトラナムは新しい葉が展開しています。
9/30では、ほぼ落葉していましたが回復は早いようです。
室内で育てていた場合は害虫予防が元気に育てるための重要な事となりそうです。
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