はじめに
私は様々な種類の植物を管理してきましたが、全く同じ環境(明るさなど)で同じ品種名の植物を育てていたにも関わらず、明らかに成長の仕方が違うと感じる事がありました。
当然な事なのかもしれませんが、はっきりと違うと感じる時が何度かあったのです。
この現象について色々と思うことがあり、今回はこの「同じ園芸品種での育ち方の違い」について調べてみました。
体験談
ここでいう具合的な成長の仕方の違いというのは、例えば対象の品種を比較した時「花が多く咲く」「たくさん実を付ける」「早く育つ」などの事です。
最近、顕著に感じた品種としてユーフォルビアに「デカリー」という品種がありますが、数株を保有している中でも葉がなかなか成長しにくい株がありました。
他の株では葉も大きく、たくさん茂らせています。
良い方に成長の仕方が異なるというのであれば嬉しいのですが、この場合、悪い方に成長の仕方が異なっています。
植物を育てていく中で「個体差」というキーワードを良く耳にします。
これは俗に言う個体差というものなのでしょうか。
個体差について
そもそも「個体差」とは何なのでしょうか。
植物での個体差について調べてみると、次の通りとなっていました。
「同じ種類の植物の中で、個々の異なる性質を持つこと」
頭に入ってきづらい説明内容ですが、それでいえばユーフォルビアの一件は「株姿」や「葉の形状」からしても同じ種類であり「個体差」ということになります。
では何故このような個体差が出てくるのでしょうか。
個体差が発生する理由としては「突然変異」や「環境要因」などが影響しているようです。
私の場合は同じ環境で生育しておりましたが、異なる点として購入した生産者が別々だったという点でした。
ただし、このケースでは生産者ごとに用土の種類や配合なども異なるはずなので土壌などの環境要因であった可能性もあります。
挿し木の遺伝子について
しかし、ここで疑問となるのが、それぞれの生産者が保有する株は遺伝子が異なる為、個体差が出てしまうというのは分かりますが、同じ遺伝子を持つであろう挿し木などで増殖した場合においても個体差は生じてしまうものなのでしょうか。
これについて調べてみると通常は「挿し木」によって異なる遺伝子を持つことはないという事でした。
「挿し木」は株の一部を切り取って、植物体を増殖させる方法となりますが、切り取る植物体(親株)と同じ遺伝子をもつコピーとなります。
ゆえに性質は同じはずです。
ところが挿し木でも稀に「突然変異」が起こる事があるようです。
突然変異によって現れる変化には「花の色」や「花形」、「葉の模様」や「形状は」もちろんのこと「生育速度」や「丈夫さ」なども含まれます。
要因としては、植物の細胞分裂の際に発生する遺伝子の複製エラーや放射線、化学物質などが遺伝子に影響を与えることによって発生すると言われています。
生物の神秘というか、例外が出てくるところが凄いよね。
異なる品種の植物の掛け合わせ(交雑)でも新しい品種を作り出しますが、この突然変異を利用して新しい品種を作り出す(品種改良)こともあるようです。
個体選抜について
突然変異によって園芸品種が生まれることもあるという事がわかりましたが、一つ思い出したキーワードがあります。
それは「個体選抜」と呼ばれるものです。
アガベなどを取り扱う専門店などで「私が自ら選んだ個体選抜種です」と商品を勧められた事がありました。
個体選抜は本来動物なども含まれますが、特定の特徴を持つものを選び出すことを指します。
例えば、たくさんあるりんごの木の中から一番大きくて甘いりんごを実らせる木を選び出します。
簡単に言えば、自分が良いと思った性質をもつ個体を選ぶ事です。
私達が日々お世話をしている植物の園芸品種を作出する方法の一つに、この「個体選抜」が行われているという事です。
実際に販売されている選抜個体
最後に
非常に簡素な話となりましたが、ここで私が一番伝えたかった事は、例え同じ品種名であったとしても、育てやすかったり、病気になりにくかったり、耐暑性に優れていたりと、良い性質をもつ個体とその真逆の悪い性質を持つ個体があるという事です。
「同じ品種名だから、どこのものでも同じだろう」と考えていると残念な結果になるかもしれません。
「こちらの生産された植物の方は丈夫で元気だが、一方ではうまく育ってくれない」という事がありえてしまいます。
もしそうであるならば、同じ品種であったとしても「育てやすい」「病気になりにくい」「たくさん花が咲く」といった性質を所有している生産者の株を選んだ方が良いという事になりませんか?
特に有名な生産者さんは個体選抜を行った魅力的な株を保有しているといって良いです。
これは確かに感じた事なので、どうせなら良い遺伝子をもつ生産者の株を選択しましょう。
そのためには気に入った生産者の名前やラベルなどを覚えておく必要があるでしょう。
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