ぷっくりと肥大した葉と可愛らしいピンクの花が特徴の植物ですが、その一般的ではない姿形からどのように育てれば良いのか戸惑う方も多いのではないでしょうか。
こちらで管理してみてわかったことをまとめてみましたので、宜しければ参考にしてみて下さい。
本種の生態と育成難易度について
カンガルーポケットはディスキディアと呼ばれる種類になります。
ディスキディアはその多くが「着生植物」の仲間となっています。
着生植物について調べてみると地面に根を生やして成長するのではなく、他の樹木などに絡み付いて(着生して)地表部よりも高い位置で成長する植物の事のようです。
一般的な植物と異なり、特殊な生態から管理方法はやや難しいです。
ディスキディアの管理方法について
着生植物は自生地では樹木や岩になどに着生していることから、地表に生える植物よりも水分を補給しづらい環境にあります。
こうしたことから、たまに降る雨と霧をうまく利用して水分補給を行います。
根を生やして水分を吸水する事よりも、葉表から吸水する性質があるのです。
そして貯水できる器官あります。
こういったことから用土の乾燥に耐性があります。
これらの環境を再現してあげれば、うまく管理する事ができます。
霧の再現は実際と同じく、夜~朝方に霧吹きで代用し、雨の再現はたまに用土に水をあげるといった感じです。
高温多湿を好む植物となっておりますが、くれぐれも用土の濡れ具合と空気中の湿度を混同しないでください。
用土や水苔などが常に湿っていると自生地での環境と異なるため枯れてしまいます。
用土は基本的には乾燥気味にし、葉表に霧吹きを多用した方が良いでしょう。
こうした事から、「乾燥したら霧吹き」を繰り返す必要があるので、毎日というほど手間がかかる品種といえます。
また、ディスキディアの多くは寒さに弱いので、できれば10℃を下回らない環境で管理すると安全です。
綿毛状の種子

ピンクの可愛らしい花ですが、開花後はすぐに種をつくります。
実はこの種が非常に厄介です、熟すと中から綿毛状の種子が出てきます。
開花に気づかず、そのまま放置していると綿毛が周りに散乱しています。
綿毛たんぽぽの同様、風によって遠くに飛ばすタイプの種子のようです。
室内で管理する場合は、周りが汚れてしまいますので、開花後は種子を取り除いた方が無難かもしれません。


開花後はこの細長の種子になるのが早いです。
いつ結実したのか分かりませんでした。


摘み取ると白い液体がでます。
手がベタベタするので注意してください。

中に入っている種子です。
まるで綿毛たんぽぽの種子のようです。
こういった種は「風散布型種子」といって、種をより遠くへ飛ばす為に進化したものとされています。

爆裂魔法が炸裂する前に摘み取ろう!
害虫について

育ててみて、わかった事は新芽の先にアブラムシがつきやすいという事です。
室内で管理していても、いつの間にか付いています。
アブラムシの成虫は羽を付けているので飛んできたか用土に卵が残っていた事になります。
画像をみていただくとわかりますが、葉が白く掠れたようになっています。
このように、すぐに駆除をしないと被害が拡大していきます。
一度傷んだ葉は元には戻りません。
アブラムシは次第に増えていきますので、出てしまったら薬剤などで早めに駆除しましょう。
(天然成分の薬剤がおすすめです。)
アブラムシが増殖する原因は乾燥とされています。
水を霧吹きするだけで抑制・予防効果があるので、試してみてください。
(最近の霧吹きについては過去記事を参考にして下さい。)
育成日記
2021
8/4 成長記録開始

2つの異なる個体の成長を記録します。
名称は個体Aと個体Bとします。
緑の硬質ポットが個体A、黒の育苗ポットが個体Bです。
個体Aには貯水嚢(ちょすいのう)はなく、個体Bには貯水嚢があります。


個体Aの用土は水苔、個体Bの用土はヤシ殻バークです。

2個体ともアブラムシにやられてしまいました。
アブラムシは葉の栄養を吸うときに傷もつけるのです。
擦り切れたような状態では見た目が良くないです。

アブラムシは最悪、ウイルスを媒介するので、また飛んできて悪さをしないように粘着シートをセットしました。

その後、個体Bにも粘着シートをセットしてあげました。
8/23 個体Aに変化がある
遠目では何も変わってないように思いますが、変化がありました。


個体Aをよくみると新芽が展開していました。

個体Bは特に変化はありませんでした。
8/25 傷んでいる葉を除去

そのまま育てても見栄えが悪いので、思い切って葉を全部落としてみました。
新しく芽吹いてはいるので、枯れることはないと見込んでの行いです。


8/30 管理方法を変えてみる
エアコンのついた室内で管理していますので、湿度が低くなっていたと思います。
ディスキディアにとっては良くない環境であったと思います。
ビニール袋を使って高温多湿を保つ実験をしてみました。
成長具合にどのような影響が出るのでしょうか。

9/8 その後の状況
【個体Aの状況】
せっかく新しい葉が展開しましたが、落葉してしまいました。



【個体Bの状況】
株元から新芽が出てきていました。



9/16 個体Aに異変
【個体Aの状況】
弱っていたところに急激な環境変化が加わり、耐えられなかったようです。

この後、枯れてしまいました。
ごめんなさい。
【個体Bの状況】
こちらは順調です。


別の新しい新梢がみられます。

10/15 個体Bにも異変


貯水嚢が腐っているようです。
何が起きたかというと、高湿度での管理が成功したので、再びビニールで覆い、湿度を高めた環境で育てました。
明るさも必要と思い、そのまま少しだけ明るい場所へ移動したところ、直射日光が当たってしまいました。
その結果、貯水嚢に葉焼けが起きてしまいました。
そこからダメージが広がり、この後個体Bも枯れてしまいました。
今回は2鉢とも復活に失敗してしまいましたが、生産者より新たな情報を掴みました。
ツルが上へ向いていないと成長が止まる性質があるとの事です。
これは大きな情報でした。
よって、多くの場合は鉢で育てていますので、ツルが登っていける支柱のようなもの必要になるでしょう。
まとめ
・用土は乾燥気味にする
・水やりは霧吹きで代用
・湿度(しつど)を好む
・風通しを好む
・寒さに弱い
・アブラムシがつきやすい
・アブラムシは霧吹きで予防
・ツルがつかまる支柱が必要