植物の好きな方は「ブロメリア」というフレーズを聞いたことがあったり、「ネオレゲリア」と言われて姿・形が想像できると思います。
しかし、なんとなく頭の中では分かっているものの、それらの違いや説明を問われると、うまく答えられなかったり、説明できないといった方も多いのではないでしょうか。
ネットで「ブロメリア」について調べてみても「パイナップル科の総称」という検索結果は出てきますが、断片的に単語を覚えただけで、なんとなく理解に及んでいないような感覚がありました。
現状、私自身も「違い」について問われるとうまく説明することができません。
なぜ説明ができないのか?理由はどこにあるのか?
今回はその理由とそれに関わる深い部分まで調べてみました。
うまく説明出来ない理由
その理由について考えたところ、一つの答えが浮かびました。
それは、単語の「単位や括りの大きさ」の把握が出来ていないからではないかという事です。
言葉には大きい括り、小さい括りのような単位が存在します。
わかり易く例えるなら「木」、「林」、「森」と聞いて、感覚的に大きさや単位が違うことが分かります。
例えば、動物である「猫」にフォーカスしたとき、猫の下に続くものとしてマンチカンやアメリカンショートヘアーなどへ枝分かれし、上には「哺乳類」があります。
「猫」という単語は総称的な単語となりますが、「哺乳類」という単語では、さらに大きな括りの単語となり、他にも「犬」などが含まれてきます。
このように馴染みのある単語であれば、それがどのくらいの単位なのか認知できていることでしょう。
では単語が「ネオレゲリア」であった場合どうでしょうか?
ネオレゲリアも総称となりますので、上に続く単位と下に続く単位が存在します。
ほかにも「エアプランツ」「ビルベルギア」「チランジア」「タンクブロメリア」「グラウンドブロメリア」「アナナス」などの単語がたくさんありますが、これらの単位や括りは把握しておりますでしょうか?
しっかりと、それぞれ階層的ば順列が存在します。
つまり、これらの単語の一つひとつを階層的に捉える事できれば、「ブロメリアとは?」についての理解へ繋がるではないかと考えたのです。
その為には、下記の「生物分類学」を知る必要がありました。
生物分類学について
「階層的に捉える」とは具体的に何を指すのかというと「生物分類学」を把握するというものです。
これは地球上の生き物に名前を付けグループ化して分類するという考えです。考案者は(考案者は別人物)世に広めたのは、スウェーデンの博物学者・生物学者・植物学者であった「カール・フォン・リンネ」であり「生物分類学の父」と呼ばれております。
私達が普段使っている「ブロメリア」などの単語は、基を辿ると「生物分類学」からなるものです。
今日進められている様々な分野での生物研究では、この分類学を基にしています。
リンネは特に「二名法」と呼ばれる新種や種の追加などで更新が可能な明記方法を確立した事で有名ですが、論文を発表する際には二名法が使われており、現代においても使われている記述方法です。
園芸における植物を理解する上で、少なからず知っておく必要があると思います。
グループについて
生物分類学では記録されたすべての生物をグループ分け(括り)をしています。
植物を買ったり、調べたりするときに〇〇科〇〇属といったものが記載されているかと思います。
この良く耳にする「科」や「属」はグループの順列的には下位にあたる部分となっており、上位には目→綱→門→界とさらに続く存在があります。
基本的な分類グループは下記の通りです。
[界]
[門]
[綱]
[目]
[科]
[属]
[種]
上へいくほど大きな括りとなっています。
下記へそのままお読みいただても構いませんが、面倒な方はこちらから飛ばしてください。
※ジブンなりに分かり易くしたものなので、内容はかなり荒いです。
●界(英語ではkingdom)
基本的に一番上位となっているグループで「界」となっています。
・動物界
・植物界
・菌界
など
生物分類学では植物以外にも、人間や犬・猫などの動物、菌類なども分類されており、その下層へは「門」というグループへ続いています。
※界については改変により諸説存在し、未だ定まっていない部分があります。
●門
植物界の下層には「シダ植物門」「種子植物門」などに分けられるようです。
・シダ植物門
葉の裏などに「胞子のう」をもつ植物層。
・種子植物門
種子植物は更に下記に分類されます。
-被子植物
イチョウ、松、ソテツなどの比較的古くからなる植物層。
植物の構造として、胚子(種子のようなもの)がむき出しになっている植物として分けられています。
これは、学生時代に朧気ながら習った記憶があります。
-裸子植物
菊の仲間や蘭などがあり、コケやシダを除いた比較的新しく誕生した植物層。
植物の構造として、胚子が子房に包まれている植物として分けられています。
種子が果肉などに隠れているような構造をしているイメージです。
乱暴な考えとして、イチョウ、松、ソテツ、コケ、シダ類以外のものを被子植物とすると覚えやすそうです。
記載した他にもありますが、園芸に関わるものとして一部を抽出しました。
●綱
被子植物には単子葉植物綱、双子葉植物綱などに分類されます。
・単子葉植物綱
1枚の子葉を持つ植物群
※子葉・・・発芽して一番最初に出る葉の事
例:ショウブ目、ユリ目、イネ目などに続く
・双子葉植物綱
子葉が2枚ある種子植物群
例:モクレン目、ナデシコ目、バラ目、キク目などに続く
「亜」の存在
大きな分類グループとして界・門・綱・目・科・属・種とありますが、分類の細分化が進み、あとから新しく発見されたものを付け加えたいなどもあり、当初のものだけでは表現ができない部分がでてきました。
更なる分類名が必要となり、各グループ間に「亜」というグループが設けられました。
例えば科であった場合、その下層は「亜科」となり、上位に「亜目」の存在があります。
他にも亜門、亜綱、亜属、亜種とそれぞれ存在しているので、かなり複雑な構造となっています。
革新的な分類法の確立
これは余談となりますが、調べていく過程で非常に厄介に感じた部分がありました。
この生物分類は時代ごとに改変されてきた歴史があり、改変前のものが今でも使われていたりするので、最新の情報がつかみづらい点です。
更には、公表されてきた理論の中でも「〇〇論派」のように、枝分かれした流派のようなものが存在しており、どれを信じるのかはその人に委ねられています。
リンネが初めて生物分類学を発表してから、幾度となく改変が行われてきました。
主に「界」以上の上層階級についての改変で、これまでに少なくとも5回以上は異論が唱えられた経緯があり、発案者であるリンネが発表した時代では、そもそも「生物進化論」という概念はなく、情報のない時代と現代のような技術がなかった為、構築には途方のない労力と時間を強いられたとされています。
ところが、時代の進歩や技術の発展により、近年では「APG分類体系」と呼ばれる革新的で新しい分類方法が考案されました。
これはいわゆる、「DNA解析」による分子系統学とされているもので、公表されたのは1998年と比較的最近の事です。
これまで公表された分類法では、生物の見た目や特徴などを基にした仮説的な分類形態であるのに対し、APG分類体系ではミクロなゲノム解析による実証的で全く新しい分類法となっています。
私としてもこのAPG分類体系に準じた分類法が、より確信に近しいものではないかと考えています。
ただし、APG分類体系は被子植物以降に限定されているようです。
ネオレゲリアの単位や括りについて
では「ネオレゲリア」であった場合、生物分類学のグループ(括り)のうち、どの程度の位置づけとなるのでしょうか。
これは一般的に「属」にあたる部分になります。
界・門・綱・目・科・属・種のうちの「ネオレゲリア属」という位置づけです。
さらに下層には「ネオレゲリア亜属」の存在はあるものの、現在では記録があまりなされていないようでした。(亜の存在についてはこちらから上記へ戻れます。)
「ファイヤーボール」という品種がありますが、これは「種」という位置づけになります。
正確にはファイヤーボールは「野生種」ではなく、「園芸交配種」として扱われているようです。
では「ネオレゲリア属」の上位にあたるグループとしては何になるのでしょうか。
正解は「パイナップル亜科」となります。
「階層」を調べてみたところ以下の通りとなっていました。
[界]植物界
↓
[門]被子植物門
↓
[綱]単子葉植物綱
↓
[目]イネ目
↓
[科]アナナス科またはパイナップル科またはブロメリア科
↓
[亜科]アナナス亜科、パイナップル亜科またはブロメリア亜科
↓
[属]ネオレゲリア属
↓
[亜属](存在はあるが記録はあまりみられない)
↓
[種]ファイヤーボール
↓
[亜種]ー
同列階級の存在(属)
階層的に捉えた場合、ネオレゲリアにも上位階級、下位階級の存在があるとするならば、ネオレゲリア属としての同列(並列)階級も存在もあります。
この同列階級の存在を把握すると、ようやく少し分かってきます。
ブロメリア属
(画像なし)
※他にもありましたが、あえて認知度の高そうなものを選出しました。
これらはすべてネオレゲリアの同列階級「属」として括られています。
上位階級の存在(亜科)
それではネオレゲリア属の上位階級である亜科の同列の階級を確認してみましょう。
亜科では8つの存在が確認されており、主に下記があげられます。
・ピトカイルニア亜科(Pitcairnioideae)
画像はURLクリック
※他にもありますが、有名なものに絞りました。
下記に階層図用意しました。(図で見た方が分かり易く、なんだかんだ言って一番重要なのがこちらの図です。)
ブロメリアとは?
結局のところ「ブロメリア」とは何なのか。
つらつらと記事を書いてきましたが、一言で言うなれば「一番大きな括り」の事です。
アナナス類やエアープランツ類やタンクブロメリア類といったグループの一番大きな括りの事を指していました。
認識を曖昧にさせている原因
ここでブロメリアにまつわる、私達の認識を曖昧にしている原因の一つを発見しました。
それは下記のとおりです。
・同階級の同義グループ名が複数存在
・階級の表現省略
【同階級の同義グループ名が複数存在について】
wikipediaの説明ではブロメリアは「アナナス科またはパイナップル科」という説明になっており、
「ブロメリア科」の表記になっている場合もありました。
ブロメリア(場合によってはブロメリア科) = アナナス科 = パイナップル科という事です。
つまり、最上位にあたる括りの呼び名が3パターンあるのです。
面倒な事にアナナスの事は英語で「Ananas」と表記しており、別の類を指す事になるので注意が必要です。
よって、英語で表現したときは「ブロメリア」、日本語で表現したときは「パイナップル科」や「アナナス科」という事になるのではないかと思われます。
【階級の表現省略について】
英語表記では、これらの科は「Bromeliaceae」となっておりますが、日本の呼び方では何故か省略されて「ブロメリア」と呼ばれています。
本来であれば「セアまたはエイシー」の部分が無いと意味が違ってくるはずです。
さらに下位の階級である「科」「亜科」「属」も何故か「アナナス」や「パイナップル」といった同じ名称が使われていました。
上位グループ名や下位グループ名を分けて表記しなければならないところ、省略して同じ名称表記されているため、階級クラス(順列)での意味合いが不明瞭になっています。
同じ単語が複数存在しており、科や属などの階級の表現を省略しているのです。
呼び名の統一がなされていないために余計混乱が生じていました。
分類用語と形態用語
調べていく過程で、下記の用語は生物分類学用語ではないという事に気が付きました。
・エアプランツ(エアブロメリア)
・タンクブロメリア
・グラウンドブロメリア
当然といえば当然ですが、これらは生物分類学上のグループ用語ではなく形態用語にあたります。
エアプランツ
チランジア属(チランドシア)の総称で一般的に霧吹きで管理するブロメリアの総称。
タンクブロメリア
主にブロメリア亜科(パイナップル亜科)にみられる葉に水を貯める性質をもつブロメリアの総称。
グラウンドブロメリア
根から水分を吸収するタイプのブロメリアの総称。
意識的に別枠で覚えておくと理解しやすくなると思います。
階層化により発覚した認識違い
形態用語の括りである「タンクブロメリア」と「グラウンドブロメリア」ですが、異なる階級グループにそれぞれ存在するということが分かりました。
例えば、ブロメリア亜科ではクリプタンサスなどのグラウンド系混じっており、チランドシア亜科にはグズマニア属、フリーセア属などのタンク系が混じっています。
この場合グループ階層を図で表したとき、亜科の中でタンク系とグラウンド系が複数存在する事になります。
言い換えれば、生物分類学では葉に水を「貯める」か「貯めない」が分類の上位の基準ではないと言う事です。
また「エアプランツ」についても同様で、チランジア属でも葉から水分を吸収「する」ものと「しない」ものが存在するようです。
私としてはここは意外でした。(上記階層図はこちらから戻れます。)
まとめ
・単語の「単位や括りの大きさ」の把握していない
・把握するには「生物分類学」から、階層的に認識する必要がある
・「科」「亜科」などの階級が省略されて認識されている
・同じ階級に同義のグループ名が複数存在
・ブロメリア科=パイナップル科=アナナス科
・「ブロメリア」はこれらのジャンルの一番大きな括りの単語
・タンク系ブロメリアが上位階級の確固たる分類基準ではない
▼専門性や知識を高めたい方は書物、図鑑などがおすすめです。
【訪問者のコメント欄】