エピフィルム(エピフィラム)の中でも赤い実を付けるフィランサス(フィランテス、フィランツス、ミニドラゴンフルーツ)と「グアテマレンシス(ガテマレンシス、ガテマレンセ、グアテマレンセ)」の両種は良く似ています。
今回は2種は同種なのか別種なのかについて調査してみました。
結論
結論として同種または近縁種ではないかと推測しました。
※憶測となりますので、間違いの可能性もございます。
色々と調べてはみましたが、両種の違いについての記述がほぼ無かったので、学名から考察をすることにしました。
詳細は下記の通りです。
学名から調べる
ラベルなどに学名の記載があれば、学名より比較をして別種や同種の判断をすることが出来ます。
流通名などが混在すると別種のように思うことがありますが、案外、学名が同じだったりします。
使える手法なので、ぜひ皆さんもお試しください。
エピフィルム・フィランサス
フィランサスのラベルの裏をみると「Epiphyllum phyllanthus」となっていました。
「Epiphyllum(エピフィルム)」は当然の事ながら属名と分かりますが、種小名である「Epiphyllum phyllanthus(フィランサス)」で調べてみると「着生サボテンの一種で、葉はなく、代わりに光合成する茎がある」とありました。
実際に販売されているフィランサスはこちらです。
エピフィルム・グアテマレンシス
グアテマレンシスには学名の記載されたラベルはありませんでしたが、グアテマレンシスのスペルは「guatemalense」という事が分かり、中南米グアテマラ地方に分布する種であることが予想できます。
こちらのスペルを元に調べてみると、一例として下記のとおりの学名が存在しました。
・Epiphyllum phyllanthus var. guatemalense Kimnach (1964) |
・Epiphyllum hookeri subsp. guatemalense Ralf Bauer |
・Epiphyllum guatemalense Britton & Rose |
・Epiphyllum phyllanthus subsp. guatemalense (Britton & Rose) U.Guzmán |
・Epiphyllum phyllanthus var. guatemalense (Britton & Rose) Kimnach |
・Epiphyllum hookeri subsp. guatemalense ‘Montrose’ |
「var.」は変種、「subsp.」は亜種の意味です。
こちらが「グアテマレンシス」として流通されているものです。
学名から分かった事
学名より調べた結果、「Epiphyllum phyllanthus(エピフィルム・フィランサス)」は本来、葉がカールするような特徴が無いという事です。
つまり、国内に流通するエピフィルム・フィランサス(ミニドラゴンフルーツ)のラベル裏にあった学名は正式には「Epiphyllum phyllanthus」ではないという事になります。
記載されていた学名「Epiphyllum phyllanthus」はミニドラゴンフルーツの基本種(母種)にあたる学名であり、基本種より遺伝的に異なる変種や亜種、園芸交配種として派生されたものの一つではないかと思われます。
一方、グアテマレンシスは「guatemalense」と付く学名が複数存在しており、葉がうねるような種が幾つか存在しました。
また、その共通点の多くに一重の引用符(‘)を用いられた学名を持つものが目立ちました。
一重の引用符(‘)は「園芸品種」という意味です。
主に一重の引用符で括られている学名としては下記のとおりです。
・’Monstruosa’ |
・’Curly Locks’ |
・’Curly Leaf’ |
「’Curly Locks’」や「’Curly Leaf’」についてを調べてみると、海外における流通名の事であり「guatemalense」の別名ということが分かりました。
また、調べていく上で葉のうねるタイプの品種に「Orchid Cactus」や「hookeri」といった表記が目立ちました。
「Orchid Cactus」について
調べてみると、こちらは学名ではなく英語表記名という事でした。
学名は世界共通表記に対し、英語表記は国独自の呼び名で、日本訳すると「クジャクサボテン属」のようなものです。
つまり、「Orchid Cactus」はエピフィルムのことです。
「hookeri」について
「hookeri」の付く学名が幾つか存在しました。
・Epiphyllum hookeri(How.) |
・Epiphyllum phyllanthus subsp.hookeri |
・Epiphyllum hookeri subsp. guatemalense ‘Monstrose’ |
調べていった結果、これらの学名は同種や近縁種であることが分かりました。
まず、「Epiphyllum hookeri(How.)」は「Epiphyllum phyllanthus subsp.hookeri」の同義とありましたので同種となります。
この種は葉がうねらないタイプです。
「Epiphyllum hookeri subsp. guatemalense」で調べた時、葉がうねらないタイプの品種も見受けられました。
「Epiphyllum hookeri subsp. guatemalense ‘Monstrose’」は「subsp.」の記述がありますので、「Epiphyllum phyllanthus subsp.hookeri」亜種であり、「’Monstrose’」は葉のうねるタイプとして生まれた園芸種ということになります。
そして、葉のうねる特徴のある品種は必ず「‘Monstrose’」と付いている事から「グアテマレンシス」の学名は「Epiphyllum hookeri subsp. guatemalense ‘Monstrose’」を指すのではないか思われます。
葉のうねるタイプの品種として海外の流通名では「Epiphyllum ‘guatemalense’」なども見受けられましたが、これは学名において本来やってはいけない略称の記述方法です。
つまり、園芸種としての葉がうねるタイプの「グアテマレンシス」も略名なのではないかと考えました。
また、こちらの学名が現在流通するラセン形状の園芸種になっているのではないかといったSNS発信の確認もとれました。
考察のまとめ
以上の事から、学名とは異なる流通名や略称など入り混じり、同種を別種のように感じさせているという事が分かりました。
「エピフィラム・フィランサス」という呼び名は本来別種にあたり、ラベル裏の学名は「Epiphyllum phyllanthu ●●●●」と続かなければならないところを、 総称名(省略名)で流通させた事により、「エピフィラム・フィランサス」が葉のうねるタイプとしてイメージが定着してしまったのではないかと考えています。
また「グアテマレンシス」の正しい学名は「Epiphyllum hookeri subsp. guatemalense ‘Monstrose’」であり、肝心な部分「‘Monstrose’」が省略された名称ではないかと思われます。
そして葉がうねるような種は「’Monstrose’」となっている事から、両種は同種または近縁種ではないかと思われます。
結局のところ、エピフィラム・フィランサスは 「Epiphyllum phyllanthus」 という広域な情報しかなく、曖昧な状況下で流通している以上、正確な違いについては遺伝的に検査をしないと判別が難しいのは事実です。
流通・生産の過程で意図しない交配がなされ、遺伝的に異なる性質をもっている場合もあります。
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