今年もまた暑い夏が到来してきます。
特に暑い季節は、室内に不快なコバエ(羽つき虫)がたくさん湧きます。
そんな虫を捕まえてくれる食虫植物といえば「ムシトリスミレ(ハエトリスミレ)」です。
ムシトリスミレは葉表にネバネバとした粘着性のある物質を出して、そこに止まった虫を捉えて消化し成長の栄養源とします。
ここまでは大抵の方は知っている知識かと思いますが、育て方となると上手く育てれるか不安な部分が出てくるでしょう。
虫取りスミレには様々な品種がありますが、今回は「スマイリングビューティー」という品種の食虫植物を実際に育ててみました。
成長と虫を捕らえる様子も記録したので、参考にしていただけたら幸いです。
スマイリングビューティーの特徴
ムシトリスミレが大きくならないという話も聞きますが、本種はムシトリスミレの中でも葉と花が大きいのが特徴です。
また、たくさんの花を咲かせる特徴があり、やや暗めの環境でも花を咲かせてくれます。
もう一つの特徴は成長が早さです。
暖かな環境であれば日に日に葉が大きくなっていくのが感じ取れます。
耐寒性についてはムシトリスミレの品種によって性質が異なりますが、本種は他の品種と比べて寒さに強いので、室内であれば容易に越冬が可能です。
掛け合わせ品種について
ラベルには「pinguicula Smilling Buauty(mactezumae×colomensis)」と記載がありました。
学名の「pinguicula(ピンギキュラまたはピングイキュラ)」は「ムシトリスミレ属」の事を指しているようです。
それぞれの掛け合わせ種についても調べてみました。
●Pinguicula moctezumae(モクテズマエ)
メキシコの険しい峡谷に生息しており、花は濃いピンクの大輪で葉は細長いのが特徴です。
温帯高山性で成長していくと多花性になる性質です。
●Pinguicula colomensis(コロメンシス)
メキシコの固有種で、同じくビビット系等のピンクの花と葉をロゼット状に形成する特殊な品種。
岩に着生して、過酷な環境にも耐える品種。
種類は温帯高山性。
両種の特性から、「スマイリングビューティー」は比較的育てやすく、丈夫な品種であると言えそうです。
明るさについて
ラベルによれば直射日光を好むと記載されているため、なるべく明るい環境を作ってあげる必要がありそうです。
ただし、明るい日照は好みますが夏の直射は苦手とあります。
これからの時期は強い日差しが続きそうですので、ひとまず育成補助ライトを使用する事にしました。
USB端子より電源供給して光を照射できるタイプの育成ライトです。
近くにパソコンがあったので、USB端子より簡単に照射ができました。
強い光がが苦手な植物もいるので、その場合はこういった補助ライトなどで育てる事ができます。
特にキッチンなど明るさが足らない場所で管理するには、このような育成ライトを使用する事で生育不良を回避できます。
暗い環境で育てていた場合は葉が間延びして、株が貧弱になってしまいますので、なるべく明るい環境を作ってあげて株を引き締めてください。
腰水について
ムシトリスミレなど多くの食虫植物は土の乾燥に弱いので受け皿などに水を張り、鉢ごと水につける手法(腰水)をお勧めします。
こうすることで、水切れを起こす心配を軽減する事ができます。
ただし、本種は根が浅張りなので用土から取れやすいです。
水分が多いと用土の腐敗が進行が早くなります。
その結果、根張りが悪くなり、根が土から取れやすくなってしまうので注意が必要です。
もし、鉢から根が取れてしまってもスマイリングビューティーは強健ですので枯れません。
新鮮な水苔などの上に置いておけば、自然と活着します。
また腰水をする場合は、清潔さを保つ為に水をこまめに交換してください。
多くの場合、雑菌の繁殖により株傷みが生じているようです。
葉水の重要性
ムシトリスミレは葉水(霧吹き)をすると調子が良いです。
霧吹きの際は普通の水ではなく活力剤などの微量要素を含む水で葉水を行ってください。
食虫植物は葉から水分や養分を効率よく吸収できるように進化したので、イキイキと育てるにはかなり有効です。
また最近の噴霧器は進化しており、どうせなら良いものを使用する事をおすすめします。
最近の霧吹きについての傾向はこちらの記事をご覧ください。
花について
容易に花を咲かせてくれました。
直径約4cmといったところでしょうか。
見事に美しい花です。
成長日記
その後の成長も記録してみました。
2021
6/19 とある変化
気温が高くなるにつれ、葉に長さが出て来ました。
冬のような寒い時期は葉が短くなるようですが、逆に暑い時期では葉が長くなるようです。
長さを計測すると約9cmありました。
新しい根が出てきています。
以前にもお伝えしたとおり、スマイリングビューティーは根が浅張りで土からちぎれやすいです。
優しく扱わないと根から取れてしまう場合があります。
小バエもしっかりと捕獲してくれているようです。
花あがりも上々ではありますが、咲く方向がバラバラです。
6/21 奇形の花をつける
奇形なのか蕾が2輪つながった状態です。
面白い咲き方を披露してくれました。
7/8 水切れを起こす
腰水で水切れすることは無いと安心していたところ、いつの間にか水位が鉢よりも下がっていて、葉がうなだれてしまいました。
急いで水やりを行いましたが、傷んだ葉は元には戻りませんでした。
腰水などの底面給水で育てた場合は、水切れ耐性が弱くなるようです。
水切れを起こしたものの、花芽をしっかりと付けていました。
植物を育てる上では、やはり油断は禁物です。
7/14 切り戻しを行う
茶色く傷んだ葉を残しておくと他に移って株自体が腐る場合があるので、思い切って刈り込みました。
その結果、かなりボリュームが無くなりました。
水苔は古くなっているようなので、ついでに交換してあげようと思います。
根が取れる現象は水苔が古くなった場合に起きるようですので、予防として早めに新しい用土に取り替える事をおすすめします。
8/5 少し成長
少しずつコンディションが戻ってきたように感じます。
花は色がつき始めておりますので、近々鮮やかな花を咲かせてくれることでしょう。
食虫植物でもムシトリスミレは花も楽しめるのが良いところです。
9/8 調子を取り戻す
株の形も整い調子が良さそうです。
もしも、トラブルなく順調に育ってくれたのなら、どこまで大きくなるのでしょうか。
9/16 新たな花芽の形成
前回の花は散り、早くも新たな花芽を形成していました。
このように、次々と花を咲かせてくれるのもスマイリング・ビューティーの大きな特徴です。
9/30 葉焼けと驚きの出来事
秋に近づき、ここでも油断が出てしまいました。
暑い時期も落ち着いてきたので、直射の当たる場所へ移動したところ「葉焼け」を起こしてしまいました。
ですが、よく観察すると新しく形成された葉(中央部)の方が、より肉厚で引き締まった葉になっているように感じます。
葉焼けを起こしますが、葉を短く、引き締まったように育てる場合は直射の方が良く育ちそうです。
ただ、引き締まった株を維持したい場合には、直射に当てた環境を継続する必要があるでしょう。
成長が早いので、日照の低い環境に戻した場合、形が崩れてしまうからです。
また、直射日光により、腰水の水がぬるま湯のように熱くなっていたので、雑菌の繁殖も注意が必要となります。
驚きの出来事
観察していた株とは別の株ですが、ピンクの花を付けました。
基本的にビビットカラーなピンク色の花ですが、こちらの個体は淡いピンク色でした。
これはレア個体なのでしょうか。
優しい花色をしていて、実に可愛いらしいです。
栄養不足か咲き始めの特徴なのか、2番花は小輪でした。
「ピンク株」と命名しました。
大切に育ててみようと思います。
10/26 調子が戻る
かなり調子が戻ってました。
これまで色々と問題は発生しましたが、それでも枯れてしまうことは無く、改めて強健な種であると実感します。
また、形が崩れてしまっても回復が早いです。
11/11 コバエを捉える様子
本当に調子が上がったムシトリスミレは粘液量が違います。
今まで管理していて、ここまで目に見えるほどの分泌量は初めてです。
11/17 ピンク株の管理方法
冬になり、日照も少ない環境なので「ピンク株」の成長具合が気になってきました。
そこで、再び補助ライトの力を借りる事にしました。
12/10 充実したボリューム感
申し分無い程に株が充実してきました。
真冬ではありますが、暖かい室内ではコバエが湧いてきますが、活躍してくれているようです。
腰水状態で、半日日のあたる窓際に置いておけば、コバエ捕獲を難なくやってくれます。
2022
1/12 ピンク株の根がとれる
気に入っていたピンク株ですが、少し触れると根が取れてしまいました。
あまり良い状態の土では無かった為、根が腐ってしまったようです。
ただ、こうなってしまっても強い品種の為、問題はないと考えています。
余っていた容器に新しい水苔を盛って、その上に乗せました。
思っていたとおり水苔が古くなると悪い影響があるようです。
早い段階で新しい水苔に変えた方が良さそうです。
2/16 花芽を確認(ピンク株)
新しい水苔に変えたところ花芽が出来ました。
2/28 花芽の成長(ピンク株)
花茎が伸びて、開花の準備を進めているようです。
気になるのは、またピンク色で咲いてくれるかという事です。
昨年は何かの偶然でピンク色だっただけの可能性もあります。
一方、最初の株の方も順調です。
3/3 開花(ピンク株)
花色は昨年同様ピンク色を確認。
その時だけ違う色が咲いたという事ではなさそうです。
また、通常のスマイリングビューティよりも少しだけ開花が遅く感じます。
3/8 ピンク株の花の大きさ
花の大きさを計測してみると、約1.7cm程度です。
花の大きさに関しても、通常種よりも小さいようです。
3/17 株分け
通常株も株が大きくなり、子株が成長して複数の株が重なっているので、株分けをすることにしました。
3株へ分ける事ができました。
大きさに合った鉢を選びます。
なんとか株分けに成功しました。
株が増えて嬉しく思います。
このまま順調に増えてくれる事を期待。
ピンク株を良くみてみると、2頭ある事に気づきました。
成功すれば増殖する事が出来ます。
株分け出来そうだね。
通常株の方は力を入れなくても簡単に解けましたが、ピンク株は何度か力付くで株分けを試みたところ、1株が散り散りになってしまいました。
小さいうちは無理をしない方が良いみたい!
4/12 開花その2(ピンク株)
無理がたたり、1株になってしまいましたが順調に成長中です。
夏の直射を避ければ直射日光を好むということで、直射に当てて管理しています。
使用した器▼
食虫植物専用用土
まとめ
・水を切らさないよう管理
・対策として腰水が有効
・葉水をする(できれば活力剤を使用)
・日照を好む(夏の直射日光は控える)
・水苔は古くなる前に交換
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