ギムノカリキウムはその見た目からしてサボテンの仲間であることはわかります。
サボテンと言えば特に育てるのに難しい訳ではなく、放っておけば育つというイメージがあります。
しかし、サボテンでも直射日光を嫌う種や湿度を好む種もあり、それぞれ育て方に違いがあるようです。
本種については、私なりに調べた事や実際に育ててみて分かった事を公開しますので参考にしていただけたら幸いです。
基本情報
学名は「Gymnocalycium anisitsii f. variegata(ギムノカリキウム アニシッツィー バリエガータ)」となっており、和名では翠晃冠錦(すいこうかんにしき)と呼ばれています。
学名よりアニシッツィー(翠晃冠)が原種であると思われますが、亜種や栽培品種など確認されているだけで約17種ほどもある多型の種です。
また、バリエガータといっても様々な種が存在しますので、原種である種小名アニシッツィーを元に育て方について調べていきたいと思います。
自生地
面倒な方は育て方へジャンプしてください
ブラジル、ボリビア、パラグアイにまたがる南アメリカに分布しています。
自生地では葉の茂みが薄く、低木葉の保護下(遮光された直射)など地面に直接根を生やして成長しています。
丘の岩や砂の山岳地帯では滅多に自生していないようです。
土質は通常では豊かな砂壌土となっており、具体的な自生地としてパラグアイ・コンセプシオン等に自生とあるので、そちらの気候を調べてみました。
参考1: www.llifle.com
参考2: www.cactusinhabitat.org
パラグアイ・コンセプシオンの気候
概要
・夏は長く、暑く、蒸し暑く、湿度が高く、一部曇り
・冬は短く、快適で、ほぼ晴れ
・1年を通して、気温は14℃~34℃の幅がある
・7℃未満または38℃を超えることは滅多にない
気温
温かい季節
・11月~3月までの約4.4ヶ月続く
・1日平均の最高気温は32℃を超える
・1年の最も暑い月は1月
・平均最高気温は34℃、最低気温は24℃
涼しい季節
・5月~8月までの約2.7ヶ月続く
・1日当たりの平均最高気温は26℃未満
・1年で最も寒い月は7月
・平均最低気温は14℃、最高気温は25℃
雲
晴れの季節
・3月~10月までの約7.1ヶ月続く
・1年のうち最も晴れた月は9月
・天候は70%の割合で快晴、晴、または一部曇り
・30%の割合で本曇りまたはほぼ曇り
曇りの季節
・10月~3月頃までの約4.9ヶ月続く
・1年のうち最も曇った月は1月
・天候は54%の割合で本曇りまたはほぼ曇り
・46%の割合で快晴、晴または一部曇り
降雨
雨季
・最も多い降雨量は、11月中心とする約31日間
・平均合計累積降雨量は152mm
乾燥期
・最も降雨量が少ない月は8月を中心とする期間
・平均合計累積降雨量は28mm
湿度(しつど)
高い季節
・1年間で最も湿度の高い期間は9月~6月の約8.2ヶ月
・その間の快適性レベルは少なくとも30%の間、蒸す、蒸し暑い、または不快
・1年間で最も蒸す月は2月で約91%の確率で蒸します。
低い季節
・1日のうち、最も蒸さない月は、8月で、蒸す可能性は約10%
育て方
ギムノカリキウム属は一般的には栽培容易な品種です。
この種は特に育てるのが簡単で順応性があり、病気になる事は滅多にないとされています。
温度耐性
パラグアイの年間の気温では、「7°C 未満または 38°C を超えることは滅多にありません」とあります。
耐寒性
耐寒性はあまりないようなので、氷点下になるような場所や霜は避けた方が良いでしょう。
ただし、土が乾いていれば-5°Cまでの耐えたという事例もあるようです。
耐暑性
37℃くらいまで気温が上がる事があるので高温には耐性があるでしょう。
日照
現生地では晴れの季節が約7ヶ月と長く続き、地面にむき出しの状態または低草に紛れて自生していることから日照を好む植物でしょう。
ただし、草丈の低い茂りのある植物と一緒に生えている事が多い為、ある程度遮光された明るい場所の方が調子よく成長するようです。
夏などの1日の最も暑い時間帯の直射日光は葉焼けの恐れがあります。
特に斑の入った部分は葉焼けを起こしやすいので、斑入りのスポットをできるだけ日陰側(北東)に向けて置くと良いようです。
日中ではなく朝日のような柔らかい直射日光を当てると強く、色彩のよい棘が形成されるようです。
水やり
現生地での一番降雨量ある月は11月中心とする約31日間となっています。
平均合計累積降雨量は152mmとなっています。
(比較対象として東京では多い月で9月を中心とする31日間、平均合計累積降雨量は192mm)
成長期
現生地での11月の気温を見た時、平均最高気温は約32℃、平均最低気温は約22℃となっていました。
気候を日本に置き換えた場合、成長期は気温の上がる夏頃であると思います。
降雨量は152mmとありますので、最低平均気温が22℃を超えるような時期では定期的な水やりが必要であると思われます。
よって、ギムノカリキウム・アニシッツィにおいては比較的水やりは必要であると言えます。
ただし、鉢ごと水に浸すなど過度な水やりは枯れてしまう恐れがあるので注意してください。
休眠期
現生地で最も降雨量が少ない月は8月を中心とする期間で平均合計累積降雨量は28mmであり、平均最高温度は約25℃、平均最低温度では約14℃となっています。
この季節では降雨量は極端に低くなっている事がわかります。
気候を日本に置き換えた場合、秋や春となると思います。
最低気温が10℃を下回る季節は断水をしてください。
土壌
水はけのよい比較的豊富な基質を好むようです。
湿度(しつど)
現生地での湿度の高い時期は9月~6月の約8.2ヶ月と長く続き、最も蒸さない8月の蒸す確率は約10%となっています。
比較的暖かな季節では蒸し暑い環境となる場合がほとんどなので、比較的湿度を好む植物であると言えます。
肥料
夏には根の成長を促す高カリウム肥料を与えると良いそうです。
参考: www.llifle.com
成長日記
2021
9/1 成長記録開始

直径6cmほどの鉢よりも小さな個体です。
以前より管理をしておりましたが、成長速度は遅く感じます。

私のイメージするサボテンの管理方法は「常に乾燥させて育てる」だと思っていました。
しかし、イメージとは違いこちらの品種は湿度(しつど)を好み、気温が暑い時は水をしっかりと与えなければならないようです。
以前サボテンの生産をしているメーカーへ見学をさせてもらった時、ビニールで覆われた、湿度の高い環境で管理されていました。
そんな湿度の高い環境化でも順調に成長していたので、カルチャーショックを受けたのを覚えています。
湿度を好むかはサボテンの種類によって異なるようです。

▲こちらは別個体の過度に水切れを起こした翠晃冠錦です。
良かれと思い乾燥気味に育てた結果、株に深いシワが寄りました。
急いで何度か灌水を行いましたが、その後こちらの個体は枯れてしまいました。
シワが寄る原因は幾つかあるとは思いますが、だいたいは水分不足によって引き起こされる症状のようです。
9/8 人工的に湿度を上げてみる

湿度を好む品種という事なので、市販のビニール袋を用いて強制的に湿度(しつど)を上げる実験を行ってみました。
9/16 特に変化なし

約1週間、ビニール内で霧吹きをし、かなり高温多湿な環境下で育ててみたところ、枯れるといった事はありませんでした。
最近の噴霧器の傾向についてはこちらの記事をご覧ください。

無風での高湿度環境下は枯れのリスクがあるかもしれません。
9/26 新たな検証案が浮かぶ

最初の検証個体を管理していて気づいた事がありました。
成長点から離れるにつれて株に張りがなく、融解したかのような形状しています。
正直なところ、株は張りがあり、形状は球体の方が好みです。
ここで、別株の水分不足気味の個体で「張り具合」や「形状」を変化がさせる事ができるか検証してみる事にしました。


特に水分不足が著しい新検証個体を1号(以下1号)、やや水分不足の進んだ新検証個体を2号 (以下2号) としました。
まずは鉢から掘り上げ、根の具合を確認してみます。

発根をしていない事が確認できました。
この状態では、中途半端な水やりでは吸水が出来ず、過度な水やりによっても株が蒸れてしまうので、育てるには厳しい状況です。


1号については水切れがかなり進んでいて、今後存命するかわからない状況です。

別記事でも発根が成功した通り、まずは水栽培で発根させてみることにしました。
株に水が当たらないように根の先端部だけに水を触れさせて管理しました。
10/21 2号より発根を確認



比較的株に張りのあった2号に発根がみられました。
実は一度発根したのですが、器から落ちてしまい、発根したものが折れてしまいました。
安定しない揺れやすい机で管理していたのが原因です。
そういった事が起きないように安定性が必要となってきます。
また、器の形状により水位が下がりやすく、何日か根に水が触れていない期間が有りました。
1号に関しては未発根の状況です。
11/16 1号も発根を確認

なかなか発根しなかった1号にもようやく動きがみられました。
個体によっては時間がかかるようです。
これにより根のないサボテンにおいて、水栽培器を用いた発根はかなり有効であるという事がわかりました。


1号・2号も成功したので、最初に観察していたピンク個体も発根を試みることにしました。
掘り上げてみると、やはり発根していませんでした。
どうにかして発根を試みたいものです。
12/1 検証個体枯れる

色々と工面しながら発根を試みましたが、残念ながら枯れてしまいました。
特にこの個体は水切れ状態が続いた事により発根部分に窪みが出来てしまい、根の部分に水を当てようとしましたが、うまく当てることが出来ませんでした。
打開策として、セラミスを用いて発根を促しましたが、菌に侵されて腐ってしまったようです。
2022
1/13 土に植え直す


2号の発根がうまくいき、状態も回復してきたので、土へ植え直す事にしました。
1/17 2号枯れる


4日後、株の変色が進み、残念ながら2号は枯れてしまいました。
植える時に、土を濡らしてしまったのが良くなかったようです。
自分としては、せっかく発根したのが乾燥してしまうのを恐れたのですが、これは逆効果だったみたいです。
枯れる場合、毎度土が濡れている状態が数日続いた時に起きています。
寒い時期の水やり、水量の多さによって枯れてしまう可能性が高そうです。

まだ1号が残っているので、1号で再挑戦することにしました。
今度は乾燥した用土の上に乗せました。
4/5 移植に成功



2号は枯れてしまいましたが、1号は移植に成功したようです。
勢いがついてきたのか、中央部には太い新しい棘が形成されていました。
また、最初は黃斑だったのが、午前中だけ直射のあたる場所で管理をしたところ赤斑へ変色しました。
これにより、移植直後は乾燥をさせた方が良いという事が分かりました。

実は2号が枯れた直後、保険として3号、4号、5号という個体も水栽培による発根の検証を開始していました。
こちらも同様に水栽培で根を出してから、乾燥させた用土へ移植しました。




4号株を掘り上げてみると、発根状態を維持していました。
これにより、極度の乾燥状態になった翠晃冠錦は「水栽培による発根後に移植」という手は有効と言えそうです。
まとめ
・暖かな時期は高温多湿を好む品種
・暖かな時期は水やりが必要
・株のシワは根に異常の場合がある
・その場合、掘り上げて確認する
・根がなければ水栽培で発根する方法がある
・用土に植え替える場合は乾燥状態にする
・寒い時期は水やりを控え、乾燥気味に管理